Punch-drunk Love(パンチドランク・ラブ)/2002年



「ブギーナイツ」でマーク・ウォルバーグを復活させ、「マグノリア」でトム・クルーズをアカデミー賞助演男優賞候補にし、そして自らもこの2作でオスカーに2度ノミネートされているポール・トーマス・アンダーソン監督(PTA)の長編第3作品目の主演は、アダム・サンドラー

アダム・サンドラーといえば、もちろん自らも映画をプロデュース・脚本執筆もするコメディアン。主演映画は軒並み大ヒット。しかし映画は常に酷評の的。”低俗””くだらない””子ども騙し”と批評家たちはこき下ろす。その彼に、”批評家たちが大好きな”PTA監督作品の主演が務まるのだろうか?というのは、一般論のみならず、アダム・サンドラー擁護委員の私としての第一印象。とはいえ、PTA×サンドラーの組み合わせはいくら期待してもし足りないくらいの映画で‥。

そんな不安をよそに、今年度のカンヌ映画祭でこの「パンチドランク・ラブ」はパルムドールこそ逃したものの、監督賞を受賞。ほっ。‥じゃあ、監督は最高、でも作品としては?ってことなのかよ!と思いつつ、各批評を読んでみました。

「あの”バカ映画”のアダム・サンドラーは姿を消し、チャップリンを彷彿とさせる悲哀だ」とか「ウディ・アレンの繊細さがサンドラーにあったとは」や、果ては「ケビン・スペイシー並のサンドラーの演技力」‥って、ちょっと誉めすぎでは?と思うような批評がごろごろ。もの凄い期待と”いつものサンドラーでは無いらしい”という不安、ちゃんと俳優さんとして演技してくれてるかしら?という複雑な心境が交錯する中で、いよいよ劇場に足を運んでみた。

この映画、思った以上にサンドラーが登場する。わずか1時間半程度の映画の中で、サンドラーの出演時間はおそらく93%ぐらいあるのではなかろうか?しかも、どアップがやたらに多い。サンドラーの顔、生理的に嫌!って人には辛いでしょう。私は大丈夫です。だけど「PTAがインタビュー言っていたようにアダムって耳の形が変だわ。」とか、「そんなにアップにしちゃ、左頬の2つ並んだホクロがめだつっちゅうの」とか、「襟足にかかってる髪、なんとかなんないかな。」と我が子を見守るような母の心境で、気がついたら映画は終わっていた。

な、なんなのこの映画?、というよりなんなのアタシ?マジでバカ?批評家にこんなに絶賛されてるのに、感動するどころか、ホクロや襟足ばっかり見て。でも、サンドラーが喧嘩する一瞬のシーンに強烈に萌えたわ‥。と、やっぱり、ロクな感想が思いつかない。もう、バカ決定。いくら考えてもしょうがないです。再度見ないことには、万が一サンドラーがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたとしても、私の頭を駆け巡るのは、ホクロと襟足だけですから。それに、あの喧嘩萌えシーンをもう一度見なくては。

というわけで、2回目を見に。1度目に見たときが”母の心境”であったとするなら、2度目はサンドラー扮するバリー・イーガンを見守る女性のひとりとして見れました。
この映画は、LA近郊に零細企業をおこし、女性ばかり7人の姉妹の中で育った主人公バリーがある女性(エミリー・ワトソン)と出会う”奇妙な”ラブストーリーです。奇妙、というのはストーリー展開も奇妙だけど、バリーの性格も奇妙。頭はいいのにもかかわらず、神経質で人付き合いが下手。感情の起伏が激しく、それを抑える事ができない。そして、いつも着ているのは大橋巨泉のような青いスーツのみ。サンドラーの映画(ビッグダディやウェディングシンガー)では、こんな人そばに居てくれたらいいな♪ってのが、普通のファンの感想らしいですが、この映画のバリーは誰もが”こんな青スーツ男、そばにいたら嫌!キモ!”と思うでしょう。‥しかし、それがあの”喧嘩萌えシーン”から一気に、”この人、最高♪”モードになります。もうね、惚れますよ。あのシーンのサンドラーは。いつ”HOW MUCH?うっしっし"といってもおかしくない巨泉スーツもこのシーンで全てチャラです。DVDが出たらこのシーンはディスクが擦り切れるまで繰り返し見ます。しかし、この時点でもまだ”演技しちゃってる”サンドラーが気になって仕方ありませんでした。

そして、懲りもせず3度目の劇場へ。この時は、バリー・イーガン自身になったつもりで見れました。不可解な言動の多いバリーですが、3度目ともなると、なんだか全ての言動には彼なりの理由があって、凄く自然に見ることができました。やっと”いつものサンドラー”イメージ(右写真)から抜け出せて映画を楽しめたようです。

きっとこの「パンチドランク・ラブ」は、アダム・サンドラーがどんな役者なのか知らなければ知らないほど、楽しめるでしょう。この映画に限った事ではありませんが、”批評家が絶賛”してるからとか評判がいいらしいから見とこう、なんて気負ってみてもPTAらしい空かし具合にやられるだけだと思います。つまり、この私が書いた感想も読まなかったほうがよかったと言う事ですか?はっはっは〜。
さ、11月末はミュージカルアニメ「アダム・サンドラーの8クレイジーナイツ」公開だわさ。

以下、ネタバレありの役に立たない知識。この映画でサンドラー扮する男が「商品についているクーポンを集めてマイレージを貯めた話」は、以前にアメリカで実際に在った実話です。って。

 

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Oct 25.02