2004年02月20日
昨年の9月に紹介だけはしていたんだけど、ちゃんと感想を書いてなかった映画「Lost In Translation(ロスト・イン・トランスレーション)が、あれよあれよという間に「ゴールデン・グローブ賞」でビル・マーレイが最優秀主演男優賞受賞したり、イギリスのオスカーといわれるBAFAをマーレイとスカーレット・ヨハンセンがダブル受賞したり、もちろん米国アカデミー賞でも数々のノミネートがされたり・・・。
映画の感想なんて人それぞれなんていうのは当たり前のことですが、この映画の感想を書くのを躊躇していたのは、この映画の舞台が日本で、ワタシがアメリカに住んでいるということに大きく影響された感想を他の人にわかってもらえるように書くのが大変っつか無理かも、という理由からですかね。まあ、でも「D姐さんはこの映画どう思いましたか?」みたいなメールもよくいただくので、ちょっと書いておこうかな、と思います。いつものことですが、映画は面白いですが、私の感想はおもしろくありませんよ!注意!あと、この感想読むと『アメリカかぶれちゃん♡』なんてワタシのこと思ってくれるかもしれません。上等っすよ。
映画のストーリーは・・・
高額のギャラで日本のウィスキーCM撮影のため来日した50歳代のアメリカ人俳優ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)と、同じホテル(セレブ御用達の新宿ハイアットですね)に滞在する新進写真家(ジョバンニ・リビシ)とその妻シャーロッテ(スカーレット・ヨハンセン)。仕事に追われる夫に相手にされず独り寂しく過ごすシャーロッテと似たような境遇に陥ったボブの年の差カップルの”TOKYO”での週末の心の交流・・・。
監督ソフィア・コッポラの第一作「ヴァージン・スーサイズ」は、ワタシにとってどうでもいい映画だったけど、それを言ってしまうと『頭悪い子ちゃん』扱いをされそうなので、このことはヒミツにしておりました。他人に真実は知られたくない年頃だからね。だから「Lost In Translation」もビル・マーレイが主役でなければ見ていなかったかもしれなかった映画。
アメリカに在住しているワタシにとって、たまの日本への帰国は楽しみであると同時に苦痛だったりする。というのは、生まれ育った街・東京であるはずなのに、アメリカに在住している期間が長くなるほど「嫌な部分」が目に付いてくる。その「ふるさと・東京」の嫌な部分が気になることが苦痛なのだ。驚くことに「Lost In Translation」ではワタシが感じる”嫌な東京”が見事に描かれている。この描写が正しいか、単なる誇張なのかというのが日本人鑑賞者による「Lost In Translation」に対する大きな論点のひとつだと思うが、ワタシは圧倒的に支持する。ソフィア・コッポラ、偉い!女優やらなくて正解!(これはまた別の問題)
ろくに通訳できない日本人が登場したり、大げさなCM監督(ダイヤモンド・ユカイだったりする)が出てきたり、変な英語をしゃべるプロのお姉さんに、「日本人をバカにしてんのか」と思う人も居るかもしれないけど、あれは映画の演出としてオッケー範囲だと思うというか大して誇張でもないように思う。ああいう人はよくいるさ。
ところで、あくまでも東京に関する描写(町並みだけでなく登場する日本人も含めて)は、ワタシには目に付く”嫌な部分”だが、日本を訪れたことのない西洋人にとっては、いい悪いの問題ではなく”奇妙”に見える点であり、当然だが映画の中で東京を”嫌”な場所として紹介してるわけではないので。念のため。
余談だが、最近では映画・テレビスターがTVCMに出演することも多くなったけど、それでもCMに出演することはアメリカでは下手をすると「格落ち」に思われてしまう。あるテレビのトークショウに、スカーレット・ヨハンセンがゲスト出演したとき、司会が「日本では、ハリウッドスターがTVCMにいっぱい出演しているって本当なんだって!?」と聞いていた。スカーレットは「そうよ。ディカプリオがクレジットカードのCMに出たり、ケビン・コスナーなんかも、えっと・・・生理用品だったかな?あ、缶コーヒーのCMだったわ」と答えて場内唖然。そこで、その日のもうひとりのゲストであったチャーリー・シーン(現在アメリカでクレジットカードのCMに出演してるし、テレビドラマに主演しているので、すっかり今では”テレビ”の人)が「僕も日本でCM出たよ。タバコとかエアコンね!」といって爆笑を買っていた。
主役のスカーレット・ヨハンセンは雰囲気があっていい。リアルライフは凄く生意気そうだけど。昔から子役で活躍していたみたいだが(一番わかりやすいのは「モンタナの風に抱かれて」での自閉症の女の子役だろう)、若干19才には見えない。タバコ吸うなよ。そしてとにかくビル・マーレイは素晴らしい。まさかいつもの”コメディアン”ビル・マーレイをソフィア・コッポラ映画に期待する人は居ないと思うが、彼ならではのシニカルさ、飄々とした感じはこの映画でも失われていない。それにビル・マーレイが無意味に長身であることがこの映画では非常に役立っている。
SNL系コメディアン出身俳優がシリアス系の”普通でしかもアートな”映画に主演、ということで昨年のアダム・サンドラーがポール・トーマス・アンダーソン監督の「パンチドランクラブ」に主演した時の存在感と比べてみると、悔しいけど、やっぱりボブ・マーレイの方が上かな、と思ってしまう。つうか、誰かに先に指摘されたらもっと悔しいから、アタシから言っておくよ!ま、芸歴というかしょってきたものの違いもあるしね。
で、映画の主題になっている「心の交流」なんだけど、コレを描くには東京しかなかった、東京がベストだったんだと思う。文化・習慣・言語がまったく違うにもかかわらずNYやロスと変わらない大都市。異邦の地に行って孤独感を味わうのは誰しも同じだと思うが、人っ子ひとりいない未開の地に居る寂しさではなく、1千万人以上もの人間が溢れているのにもかかわらず、心を通わせられる人のまったく居ない孤独感を表現するのは、現在ならTOKYOなんだろうよ。
・・・TOKYOがベストでオンリーワンであったということを敢えて無視して、ここで百歩譲って映画の舞台をバンコクやソウル、上海・北京(この場合、英語がかなり通じる香港はあてはまらない)だったらどうだったのだろう。あくまでワタシにとってだが、舞台が別の土地だったら映画の主題が同じでもまったくつまらないモノになっていたと思う。ワタシがこの映画で一番興味深かったのは、ソフィア・コッポラはなんでこんなリアルな東京が描けるの?という驚きだったから。ボブとシャーロットが一緒に出かけるクラブの感じとかそれに来ている他の人達も含めてね。なんかリアルすぎて恥ずかしくなったよ。もう、覗き見してるみたいでね。
だから、コレがTOKYO物語でなかったら、「なるほどね〜。で?ま、ボブ・マーレイはいいけど」といった程度の感想しか持たなかったかもしれない。(だけど、それを言うと『頭悪い子ちゃん』扱いをされそうなので、他言はしないね。)
でも、映画が進むにつれて、最初ワタシが”嫌な東京”として感じていた部分が次第に”居心地のよさ”に変わっていく感覚を考えると、やっぱりこの映画はイイ映画なんだなあ、舞台が別の都市だったとしても関係ないのかなあ、と思ってしまう。とはいうものの、大好きなビル・マーレイがゴールデン・グローブ賞を受賞したのはとっても嬉しいけれど、オスカーとなるとどうなんだろ?作品賞、主演男優賞、オリジナル脚本賞(コッポラ)、監督賞と4つにノミネートされているけど。ノミネートされてもいいけど受賞するまでイイのかいな?というのが正直なところっす。もう、バカ扱いされるの承知で言ってますが。
もいっこ、余談。この映画は日本語を知らない人には凄く不親切に作られているというか、日本語に英語の字幕はまったく出てこない。「キルビル」では日本語に英語字幕がついていたけど。これは非日本人観客がボブたちと同様の「日本語わかりません。アンタの英語わかりません」状態を体験すると同じという効果があるからいいのだけれど、その点を考えると、日本語のわかる人がこの映画を見ると、とてもお得感がありますよ。ガイジンさんたちが笑わないところで笑えて。
字幕でちょっと説明してあげたほうが、面白みが増すのに・・・というのもあるんですが、それをやらないところがオサレなんでしょうね。藤井隆のマシュー・南が面白いこと(アパート云々)言ってるのも全然訳されてないし、何しろガイジンさんはマシュー=Matthewなんて思ってもみないだろうし。
Lost In Translation公式サイト 映画の中の日本は間違えてないんだけど、サイトの日本は妙。
Lost in Translationサウンドトラック サントラにはビルが劇中に歌うカラオケのトラックも入っているらしい。はっぴいえんどの曲も。アメリカではDVDもすでに発売されていて、カットされたマシュー南シーンも入っているらしい。見なくては。
DIRECTORS LABEL スパイク・ジョーンズ BEST SELECTION ソフィア・コッポラの元ダンナで映画監督のスパイク・ジョーンズのミュージックビデオなどの監督作品集。この中に収録されているケミカル・ブラザーズ「Electrobank」のPVでは、新体操をする女子高生に扮したソフィア・コッポラのタイツ(レオタード)姿が見れる。本気でそれが見たいかどうかは別にして。
【”ゴーストバスターズ”だけではない!おすすめビル・マーレイ主演映画】
3人のゴースト アメリカでビル・マーレイといえば、この映画(原題「スクルージ」)をあげる人も多い代表作。ビルらしい皮肉屋なやくどころ。
キングピン/ストライクへの道 ファレリー兄弟監督のブラックコメディ。ビルはビルらしいなんともいえない”嫌な男”で好演。
おつむてんてんクリニック amazonでは在庫切れですが、レンタル屋等でみつけたら、即借りるべし。
恋はデジャ・ブ もはやラブコメのクラシック
他にも「ボールズ・ボールズ(CADDYSHACK)や「パラダイスアーミー」(STRIPES)なんかもおすすめ。